循環器内科の専門医として、アブレーション手術を担当する医師へのインタビューを通じて、術後の不整脈に対する「プロの視点」を深掘りしました。「患者さんは、一度の手術で100パーセント治ることを期待されますが、現実は少し異なります」。医師は率直にこう語ります。心房細動のアブレーションにおける一度目の手術の成功率は、疾患のタイプにもよりますが、約70パーセントから80パーセント程度と言われています。裏を返せば、約2割から3割の方は、術後に不整脈が出るため、二度目の手術(セカンド・セッション)を必要とします。専門医の視点から見れば、二度目の手術は「失敗のやり直し」ではなく、「完成度を高めるための仕上げ」です。一度目の手術で隔離した肺静脈のラインは、組織の再生能力によってわずかにつながってしまうことがあります。これは生命の持つ驚異的な復元力の現れであり、ある意味で避けられない側面もあります。二度目の手術では、その再生された「通り道」を正確に見つけ出し、そこだけをピンポイントで補強します。これにより、二度の手術を合わせた最終的な根治率は90パーセント以上にまで跳ね上がります。医師は、二度目の手術を検討するタイミングについてもアドバイスをくれました。「ブランキング期間の3ヶ月を過ぎても、依然として週に数回の発作がある場合や、薬でコントロールできない場合は、早めに二度目を検討したほうが良いでしょう。不整脈が出続けることで心臓が再び拡大し、治りにくい体質に戻ってしまうのを防ぐためです」。また、最新の知見では、一回目の手術で不整脈が完全に出なくなった方であっても、数年後に新しい場所から不整脈が出る「遅延再発」という現象も注目されています。これには加齢や生活習慣病が関与しており、手術はあくまで「現在の異常回路を断つもの」であり、将来新しい回路ができないことを保証するものではないという現実があります。インタビューを通じて明らかになったのは、アブレーション治療とは、単発のイベントではなく、患者と医師が数年間にわたって心臓の健康を共創していく「プロジェクト」であるという姿勢です。術後に不整脈が出たとしても、それは決して終わりの始まりではありません。そこから得られるデータを元に、より完璧なリズムへと近づけていく。その前向きなパートナーシップこそが、不整脈治療の真髄なのです。
専門医が語るアブレーション術後の不整脈と二度目の手術の必要性