あの日、夕暮れ時の駅のホームは、帰路を急ぐ人々で溢れかえっていました。私は仕事の締め切りと人間関係の板挟みになり、数日前から慢性的な寝不足と胸のつかえを感じていました。電車を待っている最中、ふとした瞬間に空気が肺に入ってこないような感覚に襲われ、気づいたときには「ハー、ハー」と激しく肩で息をしていました。視界が急速に狭まり、指先が凍りついたようにしびれ、立っていられなくなってその場に蹲りました。周囲の人が救急車を呼んでくれ、私は生まれて初めて救急搬送という事態を経験しました。搬送先の病院で行われた検査の結果は「異常なし」。医師からは「過換気症候群ですね。少し休めば大丈夫ですよ」と冷淡とも思える言葉をかけられ、私はそのまま帰宅しました。しかし、本当の地獄はそこから始まりました。「またあの発作が起きたらどうしよう」という予期不安に支配され、電車に乗ることも、会議に出ることもできなくなってしまったのです。何科に行けば良いのか分からず、ネットの海を彷徨い、ようやく辿り着いたのが心療内科でした。初診の診察室で、私は自分の情けなさと恐怖を涙ながらに医師に話しました。先生は私の話を遮ることなく最後まで聞き、「あなたは弱いのではなく、脳の警報機が少し敏感になっているだけですよ」と言ってくれました。その言葉を聞いた瞬間、自分を責め続けていた重い鎖が解けたような気がしました。心療内科での治療は、薬物療法と、呼吸法などのセルフケアのレクチャーが中心でした。発作が起きそうになった時に「3秒吸って2秒止めて5秒吐く」という具体的な対処法を身につけたことで、少しずつ自信を取り戻していきました。また、仕事の量を調整し、自分が何に対してストレスを感じているのかを医師と共に言語化するプロセスは、自分自身の生き方を見つめ直す貴重な機会となりました。通院を始めて半年、私は以前と同じように電車に乗って通勤できるようになりました。あの日、駅のホームで絶望を感じていた自分に教えてあげたい。その苦しみには出口があり、適切な診療科を選んで助けを求めれば、必ず以前のような明るい世界に戻れるのだと。過呼吸は、あなたが頑張りすぎていたことを教えてくれる、体からの切実なメッセージです。そのメッセージを無視せず、心療内科という場所で優しく解きほぐしてもらうこと。それが、私がこの経験から得た最大の教訓であり、今同じ苦しみの中にいる人に伝えたい心からのメッセージです。