顔面に激痛をもたらす三叉神経痛。その治療は、患者さんの症状の重さや原因、年齢、ライフスタイルなどを総合的に考慮して、いくつかの選択肢の中から最適なものが選ばれます。治療の目的は、まず痛みをコントロールし、日常生活の質を取り戻すこと。そして、可能であれば根本的な原因を取り除くことです。治療の第一選択となるのは、ほとんどの場合「薬物療法」です。三叉神経痛の痛みを抑えるのに最も効果的とされるのが、「カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)」という抗てんかん薬です。これは、過敏になった三叉神経の異常な興奮を鎮める作用があり、多くの患者さんで劇的な効果を示します。その他にも、プレガバリン(商品名:リリカ)やバクロフェンといった薬が用いられることもあります。薬物療法は、まず少量から開始し、効果と副作用のバランスを見ながら、最適な量に調整していきます。しかし、薬物療法だけでは痛みが十分にコントロールできない場合や、眠気やふらつきといった副作用が強くて薬を続けられない場合、あるいは薬の効果が徐々に薄れてきた場合には、他の治療法が検討されます。その一つが「神経ブロック療法」です。これは、ペインクリニックなどで専門的に行われる治療で、三叉神経の末端や神経節に局所麻酔薬や高周波熱凝固装置を用いて、痛みの伝達を一時的に遮断(ブロック)する方法です。痛みを即効的に和らげる効果が期待できますが、効果の持続期間には個人差があります。そして、三叉神経痛の根本的な治療法とされるのが「手術療法」です。最も標準的な手術は「微小血管減圧術(MVD)」と呼ばれ、脳神経外科で行われます。これは、耳の後ろの頭蓋骨に小さな穴を開け、手術用顕微鏡で確認しながら、三叉神経を圧迫している血管を神経から剥がし、間にクッション材を挟んで再圧迫を防ぐというものです。根治が期待できる非常に有効な治療法ですが、全身麻酔下での開頭手術であるため、一定のリスクも伴います。その他、高齢者や合併症で全身麻酔が難しい場合には、放射線を用いた「ガンマナイフ治療」という選択肢もあります。どの治療法が最適かは、専門医と十分に相談し、納得した上で決定することが重要です。
三叉神経痛の治療法。薬から手術までの選択肢