赤ちゃんの初熱はママやパパからの贈り物
多くの赤ちゃんが、生後半年から一歳頃にかけて経験する人生で初めての高熱。それは「突発性発疹」かもしれません。突然の三十八度から四十度近い高熱に、新米のママやパパは慌てふためいてしまいますが、三、四日ほどで熱が下がると同時に、お腹や背中を中心に赤い発疹が現れるのが特徴です。この発疹が出ると、「ああ、やっぱり突発性発疹だったんだ」と診断がつき、安堵のため息をつく。これは、多くの家庭で繰り広げられる「子育てあるある」の一つです。この病気の原因は、主に「ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)」、時として「ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)」というウイルスです。では、まだ行動範囲も狭く、他の子供との接触も少ないはずの赤ちゃんは、いったいどこからこのウイルスをもらってくるのでしょうか。実は、その最も有力な感染源は、赤ちゃんを日々お世話しているママやパパ、あるいはおじいちゃんやおばあちゃんといった、身近な家族なのです。ヒトヘルペスウイルス6は、実はほとんどの成人が子供の頃に感染し、その後も体内にウイルスを潜伏させています。普段は症状として現れることはありませんが、唾液の中にウイルスが排出され続けているのです。そのため、愛情表現としてのキスや、食べ物の口移し、あるいは会話やくしゃみの際の飛沫などを通じて、大人の唾液に含まれるウイルスが赤ちゃんの口や鼻に入り、感染が成立します。つまり、突発性発疹は、多くの場合、家族からの愛情のこもった日常的な接触を通じて感染する病気なのです。それはまるで、親が子供の頃に得た免疫の記憶の一部を、初めての病気という形で我が子へプレゼントしているかのようです。そう考えると、慌ててしまう高熱も、少しだけ温かい気持ちで見守れるかもしれません。