去年の冬、私は「これで一安心」と、インフルエンザの予防接種を十一月の初めに受けました。腕が少し腫れて痛かったものの、これも体が頑張っている証拠だと思い、冬本番に向けて万全の準備ができたと満足していました。しかし、年が明けた一月中旬、その油断は打ち砕かれました。朝から体の節々が痛み、ひどい悪寒が走ったのです。熱を測ると三十八度五分。すぐに病院へ駆け込むと、鼻の奥に綿棒を入れられ、数分後、医師から「インフルエンザA型ですね」と、非情な宣告を受けました。「え、ワクチン打ったんですけど」。思わずそう口にすると、医師は「ワクチンを打ってもかかることはありますよ。でも、きっと軽く済みますから」と答えました。正直なところ、その時は「やっぱりワクチンなんて意味ないじゃないか」と、少しがっかりした気持ちになりました。タミフルを処方してもらい、家に帰ってからはひたすら寝て過ごしました。しかし、ここからが普段の風邪とは違いました。高熱が出たのは最初の二日間だけで、三日目には三十七度台まで下がり、体の痛みもすっと引いていったのです。以前、ワクチンを打たずにインフルエンザにかかった時は、一週間近く高熱と関節痛にうなされ、起き上がることもままならなかった記憶があります。それに比べると、今回は明らかに症状のピークが短く、回復も早いように感じました。特に、呼吸が苦しくなったり、咳が止まらなくなったりといった、肺炎を思わせるような症状は全くありませんでした。あの時、医師が言っていた「軽く済みますから」という言葉の意味を、身をもって理解した瞬間でした。予防接種は、インフルエンザに絶対かからなくする魔法のバリアではありません。しかし、ウイルスという避けがたい敵と戦う際に、症状を軽くし、重篤な合併症という最悪の事態から身を守ってくれる、強力な盾になってくれるのです。あのがっかりした気持ちは、今では感謝の気持ちに変わっています。今年も、私は迷わず予防接種を受けに行こうと思っています。
予防接種をしたのにインフルエンザにかかった私の話