赤ちゃんの突発性発疹の感染源として、両親と並んで非常に多いのが、おじいちゃんやおばあちゃんです。特に、祖父母が孫の育児に深く関わっている家庭では、その可能性はさらに高まります。なぜなら、そこには孫を愛おしく思うがゆえの、濃厚なスキンシップが存在するからです。孫の誕生は、祖父母にとってこの上ない喜びです。その小さな存在を前にすると、誰もが思わず目尻を下げ、抱きしめ、頬ずりし、キスをしたくなるものでしょう。こうした愛情表現は、赤ちゃんの情緒的な発達にとって非常に大切なものです。しかし、感染症という観点から見ると、これらの行為は突発性発疹のウイルスを赤ちゃんに受け渡す絶好の機会となってしまいます。ヒトヘルペスウイルス6は、ほとんどの成人が体内に潜伏させており、唾液中にウイルスを排出しています。祖父母も例外ではなく、むしろ高齢であるほど、唾液中のウイルス量が多いという研究報告もあります。そのため、可愛い孫へのキスは、ウイルスを直接赤ちゃんの口に運んでしまう行為になり得るのです。また、孫の食事の世話をする際にも、感染の機会は潜んでいます。例えば、熱い離乳食を「ふーふー」と冷ましてあげる時、目には見えない唾液の飛沫が食べ物にかかってしまいます。あるいは、自分が使っている箸やスプーンで、孫に食べ物を取り分けてあげることもあるかもしれません。これらの行為は、決して悪気があってのことではなく、孫を思う愛情からくるものです。しかし、結果としてウイルスを伝播させてしまう可能性があるのです。この事実を知ると、祖父母とのスキンシップを制限すべきかと悩むかもしれません。しかし、前述の通り、突発性発疹はほとんどの子供が経験する通過儀礼のような病気です。祖父母からの愛情深い接触を無理にやめさせるよりも、病気の性質を家族全員で理解し、「これも成長の一つだね」と温かく受け止める姿勢が大切です。もし心配であれば、「お口へのキスだけは避けてね」と、やんわりとお願いしてみるのも一つの方法かもしれません。