アブレーション術後に不整脈が出るという事実は、患者の心に多大なストレスと、ある種のトラウマ的な恐怖を植え付けます。「またあの地獄の日々が始まるのか」「手術は無駄だったのか」という否定的な思考のループは、それ自体が交感神経を刺激し、心臓の期外収縮を増やす要因となります。身体の治療と同じくらい、いや、それ以上に重要なのが、術後の「心の整え方」です。まず、脈が飛ぶ感覚(期外収縮)について、捉え方を変える練習をしましょう。健康な人であっても一日に数百回から数千回は脈が飛んでいますが、アブレーションを受けた患者さんは心臓に対して非常に敏感になっているため、一回の「飛び」に対しても警報を鳴らしてしまいます。医師から「致命的な不整脈ではない」と言われているのであれば、その違和感を「心臓が正常に動こうと試行錯誤している時の小さな火花」だとポジティブにリフレーミングしてみてください。また、マインドフルネスの技法を取り入れることも有効です。動悸を感じた際、それを止めようと抗うのではなく、「ああ、今ドキドキしているな」とただ客観的に観察し、呼吸を整えることに集中します。息を4秒吸って8秒かけて吐く「ロングブレス」は、副交感神経を強制的に呼び覚まし、心拍数を落ち着かせる物理的なスイッチとなります。生活環境においても、術後は自分を徹底的に甘やかす期間を設けてください。家事や仕事の責任を一時的に半分にし、「今日は心臓を休ませる日」と決めて読書や映画鑑賞に没頭する。こうした「意識の逃避」は、心筋の回復に必要なエネルギーを確保するのに非常に効果的です。また、同じ経験を持つ患者コミュニティや家族との対話も救いとなります。「自分だけが不安なのではない」という共感は、孤独感を和らげ、精神的なレジリエンス(回復力)を高めます。術後の不整脈が出る時期は、いわば人生の「雨宿り」の期間です。雨が止むのをイライラして待つのではなく、軒先で静かに自分自身の内面を見つめ直し、これまでの無理を労わってあげる。心が健やかになれば、自律神経の不協和音は鎮まり、心臓も自然と本来の美しい旋律を取り戻していきます。あなたの心臓は、あなたが思う以上にあなたを愛し、一生懸命に動いています。その健気な働きに対し、優しさと信頼を持って接してあげることが、術後のメンタルケアの究極の極意なのです。
術後に脈が飛ぶ感覚と向き合うためのメンタルケアと心身の整え方