口内炎ができたとき、多くの人が受診先の候補として思い浮かべるのが歯科と耳鼻咽喉科です。どちらも口の中を診てくれる専門家ですが、それぞれのアプローチには特徴があり、その違いを知っておくことは、より適切な診療科を選ぶ上で役立ちます。まず歯科ですが、その専門性は言うまでもなく歯と歯茎、そして顎を含めた口腔全体の健康にあります。歯科医が口内炎を診る際は、その原因が口の中の物理的な刺激にないかを重点的にチェックします。例えば、尖った歯や欠けた歯が粘膜に当たっていないか、詰め物や被せ物に不具合はないか、入れ歯や矯正装置が粘膜を傷つけていないか、といった観点から診察します。もし、そのような物理的な原因が見つかれば、口内炎の治療と同時に、原因となっている歯の研磨や修復、あるいは器具の調整といった根本的な解決策を施すことができるのが最大の強みです。つまり、再発防止まで含めた治療が期待できるのです。一方、耳鼻咽喉科は、耳、鼻、喉を専門とし、口腔から咽頭、喉頭にかけての粘膜疾患全般を扱います。耳鼻咽喉科医は、口内炎を粘膜の炎症の一つとして捉えます。ウイルスや細菌の感染、アレルギー、全身疾患の兆候など、より内科的な視点から原因を探ることが多いのが特徴です。特に、口の奥の方や喉に近い場所にできた口内炎、風邪のような症状を伴う場合、あるいは味覚障害や声のかすれといった他の症状がある場合は、耳鼻咽喉科の領域となります。治療としては、軟膏やうがい薬の処方に加え、必要に応じて抗ウイルス薬や抗生物質の内服薬を用いたり、専門的な器具を使って患部に直接薬を塗布したりする処置も行います。まとめると、歯や器具など口の中の明らかな原因が疑われる場合は歯科、喉の不調や全身的な要因が考えられる場合は耳鼻咽喉科、と考えると分かりやすいかもしれません。もちろん、どちらを受診しても基本的な治療は受けられますが、自分の症状に合わせて専門科を選ぶことで、よりスムーズな診断と治療に繋がるでしょう。
歯科と耳鼻咽喉科の口内炎治療の違い