私たちの体の中でも特に繊細で重要な部分である首。その首に痛みが生じた時、多くの人はどの病院の扉を叩くべきか迷ってしまうのではないでしょうか。内科なのか、あるいは整骨院のような場所へ行くべきか。様々な選択肢が頭に浮かぶかもしれませんが、もし急な外傷などの特別な理由がない限り、まず最初に受診を検討すべき診療科は整形外科です。整形外科は、骨、関節、靭帯、腱、筋肉、そしてそれらを支配する末梢神経といった、体の運動に関わる器官、いわゆる運動器の専門家です。首の痛みは、これらの運動器のいずれかに問題が生じているケースが非常に多いのです。例えば、代表的な原因として挙げられるのが、頸椎、つまり首の骨の問題です。加齢によって骨が変形する頸椎症や、骨と骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が飛び出して神経を圧迫する頸椎椎間板ヘルニアなどがこれにあたります。また、不自然な姿勢で眠ってしまったことによる寝違えも、首周りの筋肉や靭帯の急な炎症であり、整形外科の専門領域です。整形外科を受診する最大のメリットは、レントゲンやMRI、CTといった画像診断装置を用いて、首の内部の状態を客観的に評価できる点にあります。医師はこれらの検査結果と、問診や触診で得られた情報とを総合的に判断し、痛みの原因を科学的根拠に基づいて診断します。原因が特定できれば、それに応じた適切な治療へと進むことができます。痛み止めの処方、血行を改善する薬、神経の炎症を抑える薬といった薬物療法のほか、首の牽引や温熱療法などのリハビリテーション、場合によっては神経ブロック注射など、多角的なアプローチで症状の改善を図ります。まずは運動器の専門家である整形外科で、命に関わるような重篤な病気や、骨、神経の明確な異常がないかを確認すること。それが、首の痛みに対する最も確実で安心な第一歩と言えるでしょう。