インフルエンザやノロウイルスなど、多くの感染症が保育園や幼稚園で大規模な集団感染を引き起こす中、突発性発疹に関しては、園内で大流行したという話はあまり耳にしません。その背景には、この病気ならではのいくつかの特徴が関係しています。第一に、感染する年齢が非常に限定的であることが挙げられます。突発性発疹は、そのほとんどが生後六ヶ月から二歳の間に発症します。つまり、同じクラスにいる子供たちの多くは、すでに入園前にこの病気を経験し、免疫を獲得済みである可能性が高いのです。感受性のある(まだ感染したことのない)子供の割合が少ないため、一人の子が発症しても、そこから次々と感染が広がっていくという事態にはなりにくいのです。第二に、感染経路が主に濃厚な接触によるものであるという点も関係しています。突発性発疹の主な感染源は唾液であり、感染が成立するためには、キスをしたり、同じ食器を使ったりといった、かなり密接な接触が必要です。もちろん、保育園では子供同士の距離が近く、おもちゃの貸し借りなどで唾液を介した感染が起こる可能性はゼロではありません。しかし、空気感染する麻しん(はしか)や水痘(みずぼうそう)のように、同じ空間にいるだけで感染が広がるほどの強力な感染力はないと考えられています。第三の理由として、ウイルスの潜伏期間が約十日と比較的長いことが挙げられます。誰かからウイルスをもらってから発症するまでに時間がかかるため、感染源の特定が難しく、集団発生として認識されにくいという側面もあります。これらの理由から、突発性発疹は、保育園で散発的に発生することはあっても、学級閉鎖につながるような大規模な流行を起こすことは稀なのです。とはいえ、子供が発熱している間は、他の子供への感染リスクを考慮し、園を休ませて自宅で安静にさせることが、集団生活における基本的なマナーと言えるでしょう。