65歳未満で発症する若年性認知症は、高齢者の認知症以上に「受診の遅れ」が致命的な社会的破滅を招くリスクを孕んでいます。現役で働く40代や50代の層にとって、仕事での些細なミスや物忘れは、当初は「過労」や「更年期障害」、「うつ病」と誤認されやすく、本人も自分のプライドを守るために異変を隠し通そうとします。しかし、若年性認知症を疑いながら受診せず、社会的な責任を果たせなくなるまで放置した場合の影響は甚大です。まず仕事面において、適切な診断名がないままミスを重ねることは、職場での評価を失墜させるだけでなく、懲戒解雇や自己都合退職という形で、キャリアを無残に断ち切られることに繋がります。もし、受診して診断書があれば、障害者雇用枠への転換や、休職制度、傷病手当金の受給といった法的・社会的な保護を受けることができますが、診断がなければ、ただの「無能な社員」として放り出されてしまうのです。次に経済的な問題です。若年性認知症の患者の多くは、住宅ローンの返済や子供の教育費、親の介護という重い経済的責任を負っています。受診を避け、症状が悪化した状態で不適切な契約を結んだり、資産を消失させたりするリスクは計り知れません。早期に受診し、医師とともに今後のライフプランを練ることで、成年後見制度の準備や、障害年金の申請といった経済的防衛策を講じることが可能になります。家族関係への影響も深刻です。働き盛りの夫や妻が、理由も分からず不可解な行動を取り、注意すると逆上する。こうした状況が続けば、パートナーは精神的に追い詰められ、離婚という選択肢が現実味を帯びてきます。受診して「これは若年性認知症という病気の結果である」と共有されれば、家族は協力者として立ち上がることができますが、受診がなければ、ただの「性格の不一致」や「愛情の欠如」として家庭が崩壊します。若年性認知症の進行は高齢者よりも早いケースが多く、受診を数ヶ月遅らせることが、その後の数10年間の生活の質を決定的に左右します。何よりも、現役世代には「自分だけは大丈夫」という強力なバイアスがかかっていますが、そのバイアスを勇気を持って取り除き、専門の医療機関である精神科や神経内科を受診すること。それは、自分自身のこれまでの努力を否定することではなく、残された長い人生を自分らしく、そして家族と共に生き抜くための、最も責任あるプロフェッショナルな決断であるべきなのです。
若年性認知症の疑いがある現役世代が受診を避けることの社会的破滅