ある朝、目覚めると右の背中にズキリとした痛みが走る。あるいは、デスクワーク中にじわじわと右の肩甲骨あたりが痛くなってくる。このような右側の背中の痛みを経験した時、多くの人が最初に思い浮かべるべき診療科は整形外科です。なぜなら、背中の痛みの原因として最も頻度が高いのは、骨や筋肉、椎間板といった運動器のトラブルだからです。整形外科は、これらの運動器を専門に扱うプロフェッショナルです。例えば、不自然な姿勢で眠ってしまったことによる寝違えや、重い物を持ち上げた際に筋肉を傷つけてしまう、いわゆる「ぎっくり背中」は、急性の筋・筋膜性腰痛症の一種であり、まさに整形外科の領域です。また、加齢や長年の姿勢の悪さからくる背骨、つまり胸椎や腰椎の変形、あるいは背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の異常(椎間板ヘルニア)なども、背中の痛みの原因となります。特に右側に症状が偏っている場合、体の歪みや特定の筋肉への過度な負担が考えられます。整形外科を受診する大きなメリットは、レントゲンやCT、MRIといった画像診断を用いて、痛みの原因を客観的に評価できる点にあります。医師はこれらの画像情報と、問診や触診による身体所見を照らし合わせ、痛みの原因がどこにあるのかを科学的に診断します。診断がつけば、痛み止めの処方や湿布、筋肉の緊張を和らげる薬、リハビリテーション、神経ブロック注射など、原因に応じた適切な治療を受けることができます。内臓の病気など、他の原因も考えられますが、まずは最も可能性の高い運動器の問題を専門家に診てもらい、深刻な骨や神経の異常がないことを確認することが、不安を解消し、的確な治療へ進むための最も確実な第一歩と言えるでしょう。