三叉神経痛と診断されると、いつまたあの激痛に襲われるかという恐怖から、日常生活の些細なことにも過敏になってしまうものです。薬物療法やその他の治療と並行して、日常生活の中で少し工夫を凝らし、痛みを誘発する「トリガー」をなるべく避けるように心がけることは、症状をコントロールし、生活の質を維持する上で非常に重要です。まず、多くの患者さんを悩ませるのが「食事」です。咀嚼(そしゃく)という動作そのものがトリガーになることが多いため、硬いものや、何度も噛まなければならない食べ物は避け、おかゆやスープ、ヨーグルト、豆腐など、やわらかく、あまり噛まなくても飲み込めるような食事を工夫しましょう。食事は、痛くない側に偏って噛むように意識するのも一つの方法です。また、熱すぎるものや冷たすぎるものは刺激になりやすいため、人肌程度の温度のものが安心です。次に「洗顔や歯磨き」です。これも痛みを誘発しやすい代表的な動作です。洗顔の際は、顔をゴシゴシこするのではなく、ぬるま湯で優しく洗い流す程度にしましょう。歯磨きは、ヘッドの小さなやわらかい歯ブラシを使い、トリガーポイントを避けて、そっと磨くようにします。痛みが強い時は、無理をせず、刺激の少ない洗口液(マウスウォッシュ)でうがいをするだけでも構いません。また、冬場の冷たい風や、夏場のエアコンの風が直接顔に当たることも、痛みの引き金になります。外出時には、マフラーやマスク、スカーフなどで、顔の痛む側を保護し、冷たい刺激から守るようにしましょう。室内にいる時も、エアコンの風が直接当たらない場所に座るなどの配慮が必要です。精神的なストレスや疲労も、痛みを悪化させる要因となり得ます。十分な休息と睡眠をとり、リラックスできる時間を持つことも大切です。これらの工夫は、痛みを完全になくすものではありませんが、発作の頻度を減らし、痛みの恐怖を和らげる助けとなります。何が自分のトリガーになるのかを注意深く観察し、自分なりの「痛みを避けるコツ」を見つけていくことが、この病気と上手く付き合っていくための第一歩です。
三叉神経痛と診断されたら。日常生活で気をつけること