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上の子から下の子へうつるケースと対策
一人目の子供が突発性発疹にかかった時、多くの保護者が次に心配するのが「下の子にうつるのではないか」ということです。特に、下の子が生後間もない場合、その心配はさらに大きくなるでしょう。結論として、兄弟間での感染は十分に起こり得ます。突発性発疹のウイルスは、症状が出ている間はもちろん、解熱後も比較的長い期間、唾液や尿、便などから排出されることが分かっています。子供同士は、体を寄せ合って遊んだり、おもちゃを共有したり、時には舐め合ったりと、非常に濃厚に接触する機会が多いものです。上の子が使ったコップやスプーンを下の子が使ってしまったり、くしゃみや咳の飛沫を浴びてしまったりすることで、容易に感染は広がります。では、どのように対策すれば良いのでしょうか。まず、感染している上の子と下の子の接触を、可能な範囲で減らすことが基本です。完全に隔離するのは難しいかもしれませんが、遊ぶ部屋を分けたり、寝る場所を一時的に離したりするだけでも、接触時間は減らせます。次に重要なのが、お世話をする保護者の衛生管理です。上の子のおむつを替えたり、鼻水を拭いたりした後には、必ず石鹸と流水で丁寧に手を洗いましょう。その手で下の子のお世話をすると、ウイルスを運んでしまうことになります。また、おもちゃの共有にも注意が必要です。上の子が口に入れたり、舐めたりしたおもちゃは、こまめに洗浄・消毒しましょう。プラスチック製のおもちゃなら、水洗いやアルコールでの拭き取りが可能です。タオルの共用も避けるべきです。兄弟それぞれに専用のタオルを用意し、絶対に使い回さないようにしてください。ただし、下の子が生後六ヶ月未満で、まだママからの移行抗体が残っている時期であれば、たとえウイルスに接触しても感染しなかったり、感染しても症状が出なかったりすることもあります。過度に神経質になる必要はありませんが、基本的な感染対策を心がけることが、家族全員の健康を守ることにつながります。
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なぜマイコプラズマ肺炎は見逃されやすいか
「病院へ行ったのに、ただの風邪としか言われなかった」「薬を飲んでも一向に咳が治まらない」。マイコプラズマ肺炎にかかった大人の多くが、このような経験をしています。この病気は、なぜこれほどまでに見逃されやすく、診断がつきにくいのでしょうか。その理由は、いくつかの要因が複雑に絡み合っているからです。第一の理由は、初期症状がごく普通の風邪や気管支炎と非常によく似ていることです。発熱、倦怠感、頭痛、そして咳。これらの症状だけでは、医師も初期の段階でマイコプラズマ肺炎と断定するのは困難です。多くの場合は、まず一般的な風邪としての対症療法や、細菌による二次感染を想定した抗生物質の処方から始まるのが現実です。第二に、この病気が「非定型肺炎」であるという特徴が挙げられます。通常の細菌性肺炎であれば、聴診器を胸に当てると特徴的な雑音が聞こえたり、胸部レントゲン写真で白くはっきりとした肺炎の影が映ったりすることが多いのですが、マイコプラズマ肺炎では、これらの所見が乏しいことが少なくありません。聴診では異常がなく、レントゲンを撮っても、ごく淡い影がうっすらと見える程度で、「肺炎としては典型的ではない」と判断されてしまうのです。そして第三に、確定診断に至るまでの検査のハードルがあります。マイコプラズマ肺炎を確実に診断するためには、血液を採取して特定の抗体の量を調べる抗体価測定や、喉の粘液や痰から菌の遺伝子を検出するLAMP法などの特殊な検査が必要です。しかし、これらの検査は結果が出るまでに数日かかることがあり、全てのクリニックで常に行えるわけではありません。このような背景から、最終的には、臨床経験豊富な医師が、患者の「頑固で乾いた咳」という特徴的な症状や、周囲での流行状況、そして一般的な抗生物質が効かないという経過などから、「マイコ”らしい”」と判断し、効果のある抗生物質を処方する「経験的治療」が行われることが多くなります。もし、あなたの咳が長引いているなら、診断の難しさを理解した上で、これまでの経過を詳しく医師に伝えることが、正しい診断への近道となります。
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口内炎で病院へ行くべきサインと受診先の選び方
口内炎は身近な症状なだけに、つい市販薬で済ませたり、自然に治るのを待ったりしがちです。しかし、中には専門的な治療が必要なケースや、重大な病気のサインである可能性も隠れています。では、どのような状態になったら病院を受診すべきなのでしょうか。その見極めのサインを知っておくことは非常に重要です。まず一つ目のサインは、症状の期間です。通常の口内炎であれば、長くとも二週間以内には治癒に向かいます。もし二週間以上経っても改善しない、あるいは悪化する一方である場合は、迷わず受診を検討してください。二つ目は、口内炎の大きさや数です。直径が一センチを超えるような大きなものができた場合や、小さな口内炎が広範囲に多発している場合は、専門的な治療が必要な可能性があります。三つ目は、激しい痛みを伴うケースです。食事や水分補給もままならないほどの痛みがあるなら、我慢せずに医師の助けを借りるべきです。栄養不足がさらなる悪化を招く悪循環に陥る前に、適切な処置を受けましょう。四つ目は、口内炎以外の症状がある場合です。例えば、発熱や全身の倦怠感、リンパ節の腫れ、皮膚や他の粘膜にも異常が見られる場合は、単なる口内炎ではなく全身性の疾患が背景にある可能性が考えられます。これらのサインが見られたら、次はどの科を選ぶかです。一般的な口内炎で、口の中だけの症状であれば、歯科か耳鼻咽喉科が第一選択です。歯や入れ歯が当たるなど原因が明らかなら歯科、喉の痛みも伴うなら耳鼻咽喉科が良いでしょう。一方で、皮膚にも発疹があるなら皮膚科、発熱や倦怠感を伴うなら内科を受診するのが適切です。受診先に迷った場合は、まずかかりつけの歯科医や内科医に相談し、そこから専門の科を紹介してもらうという方法も賢明です。自分の症状をよく観察し、適切なタイミングで適切な医療機関にかかることが、辛い症状からの早期解放に繋がります。
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風邪の治療における漢方というアプローチ
風邪をひくと、多くの人は西洋医学の病院で解熱剤や咳止めといった対症療法の薬を処方してもらいます。これは辛い症状を和らげる上で非常に有効ですが、一方で「根本的な解決になっていない気がする」「薬を飲むと胃が荒れる」と感じる方もいるかもしれません。そんな時、もう一つの選択肢として漢方医学のアプローチがあります。漢方では、風邪を単一の病気として捉えるのではなく、その人の体質や、風邪の進行段階によって細かく状態を分類し、それぞれに合った処方を選びます。例えば、風邪のひきはじめで、ゾクゾクと寒気がして首筋がこわばるような段階では、体を温めて発汗を促すことで邪気を追い払うことを目指し、「葛根湯」などがよく用いられます。一方、病状が進行して熱が高く、喉が渇いて汗をかくような段階では、体の熱を冷ます働きのある生薬を含む処方に切り替えます。また、風邪が長引いて体力が落ち、食欲不振や倦怠感が続く場合には、失われた気力や体力を補うことを目的とした「補中益気湯」のような処方が選ばれることもあります。このように、漢方治療は一人ひとりの状態に合わせてオーダーメイドで対応するのが特徴です。症状を抑えるだけでなく、体が本来持っている自然治癒力を高め、病気と闘う力をサポートすることに重きを置いています。風邪をひきやすい、治りが悪いといった体質自体の改善を目指せるのも大きな魅力です。漢方薬は、一般の内科や耳鼻咽喉科でも処方してくれる医師が増えていますが、より専門的なアドバイスを求めるなら、漢方内科や漢方薬局に相談するのも良いでしょう。西洋医学と漢方医学、それぞれの長所を理解し、自分の体調や考え方に合わせて上手に使い分けることが、健やかな毎日を送るための賢い選択と言えるかもしれません。
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医師が語る大人のRSウイルス感染症の見極め
今回は呼吸器内科を専門とする医師に、見過ごされがちな大人のRSウイルス感染症についてお話を伺いました。先生、大人がRSウイルスに感染した場合、普通の風邪と見分けるポイントはありますか。「正直に言うと、症状だけで完全に見分けるのは非常に困難です。鼻水、喉の痛み、咳、発熱といった症状は、他の多くの風邪ウイルスと共通しているからです。しかし、診断のヒントになるいくつかの特徴はあります。一つは、痰の絡む湿った咳が、他の症状が治まった後も二週間以上しつこく続く場合です。もう一つは、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)が聞こえる場合です。これは気管支が狭くなっているサインで、RSウイルス感染症でよく見られる所見です。また、最も重要な手がかりは、身近な、特に子供の感染歴です。一ヶ月以内に、お子さんやお孫さんがひどい咳を伴う風邪をひいていなかったか、という問診は診断の上で非常に役立ちます」診断はどのように行われるのですか。「近年、インフルエンザのように鼻の奥の粘液を綿棒で採取して調べる迅速診断キットが普及してきました。これにより、外来で十五分程度で診断がつくようになり、以前よりも診断される大人の患者さんは増えています。ただし、この検査はウイルス量が多い発症初期でないと陽性になりにくく、保険適用も限られているため、全てのケースで行われるわけではありません」治療法について教えてください。「残念ながら、RSウイルスそのものに直接効く抗ウイルス薬はありません。したがって、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。咳がひどければ咳止めや去痰薬、気管支拡張薬を、熱が高ければ解熱鎮痛剤を処方します。細菌による二次感染が疑われる場合には、抗菌薬を使用することもあります。基本的には、ご自身の免疫力でウイルスが排除されるのを待つことになります。だからこそ、十分な休養と水分補給が何より大切なのです」最後に、どのような場合に注意が必要ですか。「高齢の方、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患、心疾患をお持ちの方は、重症化して肺炎に至るリスクが高いことを知っておいてください。息苦しさや呼吸困難、高熱が続くといった症状があれば、迷わず医療機関を受診してください。大人のRSウイルスは、基礎疾患を持つ方にとっては決して『ただの風邪』ではないのです」。
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なぜインフルエンザの予防接種は毎年必要なの
「去年もインフルエンザの予防接種を受けたのに、どうして今年もまた受けなければいけないの?」これは、多くの人が抱く素朴な疑問です。麻しん風しんのワクチンのように、一度受ければ長期間効果が続くものもあるのに、なぜインフルエンザだけは毎年接種が推奨されるのでしょうか。その理由は、インフルエンザウイルスが持つ、非常に厄介な二つの性質にあります。一つ目の理由は、ワクチンの効果が永続的ではないことです。前述の通り、インフルエンザワクチンの効果が持続するのは約五ヶ月間とされています。接種によって作られた抗体の量は、時間と共に少しずつ減少していき、次のシーズンまでには、感染を防ぐのに十分なレベルではなくなってしまいます。そのため、次の冬の流行に備えるためには、改めてワクチンを接種し、免疫を再活性化させる必要があるのです。そして、より重要で根本的な二つ目の理由が、「ウイルスの変異」です。インフルエンザウイルスは、非常に変化しやすい、いわば「変装の名人」なのです。ウイルスは増殖する際に、自身の遺伝情報を少しずつ間違えながらコピーしていきます。この小さな間違いの積み重ねによって、ウイルスの表面にあるタンパク質の形が毎年少しずつ変化していきます。これは「連続変異」と呼ばれ、まるで車が毎年モデルチェンジを繰り返すようなものです。私たちの免疫システムやワクチンによって作られた抗体は、このウイルスの表面の形を目印にして攻撃します。そのため、ウイルスが変装して形を変えてしまうと、去年のワクチンで作られた抗体は、今年の新しいウイルスをうまく認識できず、効果がなくなってしまうのです。このウイルスの変異に対応するため、世界保健機関(WHO)は、世界中の流行状況を監視し、その冬に流行する可能性が高いウイルスのタイプを毎年予測しています。そして、その予測に基づいて、毎年新しいワクチンが作られているのです。つまり、私たちが毎年受ける予防接種は、去年のものとは中身が違う、その年の流行に合わせた「最新モデル」なのです。この二つの理由から、インフルエンザの流行シーズンを安心して乗り切るためには、毎年の予防接種が欠かせないのです。
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右側の背中の痛みはまず整形外科を考える
ある朝、目覚めると右の背中にズキリとした痛みが走る。あるいは、デスクワーク中にじわじわと右の肩甲骨あたりが痛くなってくる。このような右側の背中の痛みを経験した時、多くの人が最初に思い浮かべるべき診療科は整形外科です。なぜなら、背中の痛みの原因として最も頻度が高いのは、骨や筋肉、椎間板といった運動器のトラブルだからです。整形外科は、これらの運動器を専門に扱うプロフェッショナルです。例えば、不自然な姿勢で眠ってしまったことによる寝違えや、重い物を持ち上げた際に筋肉を傷つけてしまう、いわゆる「ぎっくり背中」は、急性の筋・筋膜性腰痛症の一種であり、まさに整形外科の領域です。また、加齢や長年の姿勢の悪さからくる背骨、つまり胸椎や腰椎の変形、あるいは背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の異常(椎間板ヘルニア)なども、背中の痛みの原因となります。特に右側に症状が偏っている場合、体の歪みや特定の筋肉への過度な負担が考えられます。整形外科を受診する大きなメリットは、レントゲンやCT、MRIといった画像診断を用いて、痛みの原因を客観的に評価できる点にあります。医師はこれらの画像情報と、問診や触診による身体所見を照らし合わせ、痛みの原因がどこにあるのかを科学的に診断します。診断がつけば、痛み止めの処方や湿布、筋肉の緊張を和らげる薬、リハビリテーション、神経ブロック注射など、原因に応じた適切な治療を受けることができます。内臓の病気など、他の原因も考えられますが、まずは最も可能性の高い運動器の問題を専門家に診てもらい、深刻な骨や神経の異常がないことを確認することが、不安を解消し、的確な治療へ進むための最も確実な第一歩と言えるでしょう。
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ストレスが原因の首の痛みに心療内科も
整形外科でレントゲンを撮っても骨に異常はなく、脳神経外科でMRIを撮っても原因が見当たらない。それなのに、首から肩にかけての重苦しい痛みや張りが一向に取れない。そんな原因不明の首の痛みに悩まされている方は、もしかしたらその痛みの根源が、体ではなく心にあるのかもしれません。現代社会を生きる私たちは、仕事や人間関係など、様々なストレスに常に晒されています。この精神的なストレスが、実は体の痛みを引き起こす大きな要因となることが知られています。心と体は密接に繋がっており、精神的な緊張状態が続くと、私たちの自律神経のうち、体を興奮・緊張させる役割を持つ交感神経が優位になります。交感神経が活発になると、体は戦闘態勢に入り、無意識のうちに全身の筋肉がこわばります。特に、首や肩周りの筋肉はストレスの影響を受けやすく、持続的に緊張することで血流が悪化します。血行不良に陥った筋肉には、疲労物質や発痛物質が溜まりやすくなり、これがコリや痛みとなって現れるのです。これは、ストレスが原因で起こる緊張型頭痛と同じメカニズムです。このようなストレス性の首の痛みの場合、いくら痛み止めを飲んだり、マッサージを受けたりしても、根本的な原因である精神的ストレスが解消されない限り、症状は繰り返し現れます。もし、あなたが様々な病院を巡っても改善しない首の痛みに悩んでおり、なおかつ、最近よく眠れない、気分が落ち込む、何事にも興味がわかないといった心の不調を同時に感じているのであれば、一度、心療内科や精神科の受診を検討してみてはいかがでしょうか。心療内科では、カウンセリングを通じてストレスの原因を探ったり、物事の受け止め方を見直す手助けをしてくれたりします。また、必要に応じて、筋肉の緊張を和らげる薬や、心のバランスを整える抗不安薬、抗うつ薬などが処方されることもあります。心の緊張がほぐれることで、結果として体の痛みも軽快していくケースは決して少なくありません。原因不明の痛みは、あなたの心が発しているSOSのサインかもしれません。その声に耳を傾ける勇気を持つことが、回復への第一歩となるのです。
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家庭内感染を防ぐために親ができること
子供が保育園や学校からRSウイルスをもらってくるのは、ある意味で仕方のないことです。問題は、そこからいかにして家庭内での感染拡大を防ぎ、特に重症化リスクの高い家族を守るかという点にあります。看病する親自身が感染してしまっては、共倒れになってしまいます。RSウイルスは非常に感染力が強く、主な感染経路は、咳やくしゃみによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で目や鼻、口を触ることによる「接触感染」です。これらの経路を断ち切ることが、予防の基本となります。まず、最も重要かつ効果的なのが「手洗い」です。子供の鼻水を拭いた後、おむつを替えた後、食事の世話をした後など、子供と接触するたびに、石鹸と流水で指の間や手首まで丁寧に洗いましょう。すぐに手が洗えない場合は、アルコールベースの手指消毒剤も有効です。看病する親は、無意識のうちに自分の顔を触っていることが多いため、意識的に顔に手を持っていかないようにすることも大切です。次に、マスクの着用です。感染している子供にマスクをさせるのは、年齢によっては難しいかもしれませんが、少なくとも看病する親はマスクを着用しましょう。これにより、子供からの飛沫を直接吸い込むリスクを減らすことができます。また、ウイルスの付着しやすい場所の消毒も有効です。子供がよく触るおもちゃや、ドアノブ、テーブル、リモコンなどは、市販のアルコール除菌スプレーや、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を薄めたもの)でこまめに拭き掃除をしましょう。タオルの共用も感染のリスクを高めます。家族それぞれが個人用のタオルを用意し、絶対に使い回さないようにしてください。室内の換気を良くして、ウイルスの濃度を下げることも忘れてはいけません。完璧に防ぐことは難しいかもしれませんが、これらの対策を一つ一つ地道に続けることが、家庭内での二次感染、三次感染のリスクを確実に減らします。子供の看病で心身ともに疲れている時こそ、自分の身を守るための予防策を意識的に行うことが重要です。
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喉や鼻の症状が辛い風邪は耳鼻咽喉科へ
風邪の症状は人によって様々ですが、特に喉の痛み、鼻水、鼻づまりといった症状が際立って辛い場合があります。熱やだるさはそれほどでもないのに、喉が焼けるように痛くて食事がとれない、鼻が詰まって夜も眠れない、といった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。このような、いわゆる鼻や喉、つまり上気道の症状が中心の場合は、耳鼻咽喉科を受診することが非常に有効な選択肢となります。耳鼻咽喉科は、その名の通り耳、鼻、喉の専門家です。内科が全身を幅広く診るのに対し、耳鼻咽喉科は特定の範囲をより深く、専門的に診察します。最大のメリットは、専門的な器具を用いた直接的な診察と処置が受けられる点にあります。例えば、ファイバースコープを使って鼻の奥や喉の状態を直接観察し、炎症の程度を正確に把握することができます。これにより、単なる風邪なのか、あるいは副鼻腔炎や扁桃炎を併発しているのかといった詳細な診断が可能になります。また、治療においても専門性が発揮されます。耳鼻咽喉科では、炎症を抑える薬液を霧状にして鼻や喉の患部に直接届けるネブライザー治療(吸入治療)を行うことができます。これは飲み薬よりも即効性が期待でき、辛い症状を和らげるのに非常に効果的です。鼻水を吸引する処置なども、家庭ではできない専門的なケアの一つです。もちろん、内科でも風邪の治療は可能ですが、喉の痛みで声が出ない、黄色い鼻水が止まらない、耳が詰まった感じがするなど、症状が鼻や喉に集中していると感じた時は、迷わず耳鼻咽喉科の扉を叩いてみてください。専門医による的確な診断と処置が、辛い症状からの早期回復を力強くサポートしてくれるはずです。