今回は、長年子供たちの診療に携わってきた小児科医に、突発性発疹の感染経路に関する常識と、保護者が抱きがちな誤解についてお話を伺いました。先生、やはり突発性発疹は、家族からうつることがほとんどなのでしょうか。「はい、その通りです。感染経路は主に保護者や近親者の唾液に含まれるヒトヘルペスウイルス6です。愛情表現としてのキスや、ごく日常的なお世話を通じて感染します。特別な場所でもらってくる病気ではなく、家庭内で感染が完結することがほとんどです。ですから、誰からうつったのかを詮索したり、自分を責めたりする必要は全くありません」。感染を防ぐために、何か特別な対策は必要でしょうか。「結論から言えば、特別な対策は不要だと考えています。突発性発疹は、ほとんどの子供が経験する、予後良好な病気です。むしろ、免疫を獲得する上では、乳幼児期にかかっておく方が望ましいとさえ言えます。もちろん、基本的な衛生観念として、食器の共有を避けるといったことは大切ですが、感染を恐れるあまり、赤ちゃんとのスキンシップを過度に制限するのは、情緒的な発達の観点から見てもお勧めできません」。よくある誤解について教えてください。「一つは、『一度かかったらもうかからない』という誤解です。突発性発疹の原因ウイルスには、主にHHV-6とHHV-7の二種類があります。多くの場合はHHV-6によるものですが、一度HHV-6にかかっても、その後HHV-7に感染して、二回目の突発性発疹を発症することがあります。症状は一回目より軽いことが多いですが、『二度かかることもある』と知っておくと、いざという時に慌てずに済みます」。もう一つの誤解は、発疹についてです。「熱が下がって発疹が出てくると、多くの保護者の方が『この発疹は他の子にうつるのでは?』と心配されます。しかし、発疹自体に感染力はありません。発疹は、ウイルスに対する体の免疫反応の結果として現れるもので、この時期にはウイルスの排出量もかなり減っています。ですから、発疹が出ていても、本人の機嫌が良く元気であれば、外出したり、保育園に登園したりしても問題ありません(登園の可否は園の規定に従ってください)」。