ほとんどの風邪は数日から一週間程度で自然に快方へ向かいますが、中には危険な病気が隠れているケースも存在します。いつもの風邪とは違う、という体のサインを見逃さないことが、重症化を防ぐために非常に重要です。では、どのような症状に注意すべきなのでしょうか。まず、高熱が続く場合です。市販の解熱剤を飲んでも熱が下がらない、あるいは三日以上にわたって三十八度以上の高熱が続く場合は、単なる風邪ではない可能性を考えるべきです。肺炎や腎盂腎炎、髄膜炎など、細菌感染による重い病気が背景にあるかもしれません。次に、呼吸の状態です。安静にしていても息が切れる、肩で息をする、横になると呼吸が苦しい、唇の色が紫色っぽいといった症状は、肺炎や気管支喘息の悪化など、深刻な呼吸器系の異常を示唆しています。これは緊急を要するサインであり、速やかに医療機関を受診する必要があります。また、意識の状態にも注意が必要です。話しかけても反応が鈍い、呼びかけに答えない、言動が支離滅裂になるなど、意識レベルの低下が見られる場合は、脳に影響が及んでいる可能性があり、極めて危険な状態です。さらに、激しい頭痛や嘔吐を伴う場合も警戒が必要です。特に、これまで経験したことのないような強い頭痛は、くも膜下出血や髄膜炎のサインかもしれません。これらの危険なサインが見られた場合、どの科を受診すればよいのでしょうか。答えは、迷わず救急外来を受診するか、救急車を要請することです。夜間や休日であっても躊躇してはいけません。かかりつけ医に相談する余裕はなく、一刻も早い専門的な診断と治療が求められます。いつもの風邪だと軽視せず、自分の体、あるいは家族の体の変化に敏感になること。それが、いざという時に命を守るための第一歩となるのです。